急に部下が「辞める」と言いだしても時すでに遅し。ferret創刊編集長 飯髙悠太氏

退職と言うのはネガティブなイメージが非常に強い。よく退職するときに上司とこじれて、あまり良い辞め方ではなかった、なんて話も耳にする。上司としても部下が辞める=自分の評価がマイナスになる可能性を考えると、いかにして辞めさせないか、そこに頭を悩ませる方も多いのではないだろうか。

その一方で、退職者が笑顔で去っていく組織がある。それがWebマーケティングメディアのferretを運営している株式会社ベーシックだ。実は私自身も元社員として同社を去っていった1人でもある。私が在籍していた当時、何度か退職していく人間を見たが大半の人が笑顔で退職していくのが印象的で、その後、出戻りしてくる社員もいたほどだ。

ある意味、私自身がそんな環境に居たからこそ聞ける「部下の退職について」というテーマを元上司の飯髙 悠太氏にぶつけてみた。

株式会社 ベーシック 執行役員
ferret 創刊編集長
飯髙 悠太氏

これまで広告代理店、制作会社、スタートアップなどを経験。複数のWebサービスやWebメディアの立ち上げに関わる。2014年の4月にWebマーケティングのノウハウが学べるメディア「ferret」の立ち上げにあたり参画。同年の9月にリリース。2017年1月で月間270万PV、34万人の会員を誇る。

 

部下の退職ってどう思いますか?

―― 今日は本当にありがとうございます。こんな喧嘩を売ってるようなインタビューを受けてくださって(笑)

飯髙:
ほんとだよ(笑)

 

―― 全然そんな意図はないです、念のため(笑)退職ってネガティブなイメージですけど、僕が辞めるときも含めて御社を退職する人はみんな笑顔だなと。なので辞めた後だからこそ、部下の退職について飯髙さんがどう考えているか聞いてみたいっていうのが本インタビューの趣旨です。

飯髙:
俺にとってはネガティブだけどね!でもちゃんと答えます(笑)

 

―― ちょっと結論出た感じですけど、改めて本題に入っていきますね。率直に部下が退職するってどう思いますか?

飯髙:
それ難しいな(笑)個人と組織の両方の側面があるかな。大前提として社員って家族じゃないよね。一生一緒にいるわけじゃないっていうのはあるんだけど、個人的には辞められるのは素直に嫌だなって思うケースのほうが多いね。

組織としては会社というバスがあって座席が用意されてるのに、そこに乗れないんだったら降りた方が良い。それに、その組織にいることで自分の未来を邪魔しているのであれば、環境を変えることで新たな成長の機会をつくれるし。

だから辞めることが、その人にとってのプラスであれば基本OKっていうスタンスかな。いつも退職を希望した人が辞めた後にどんな人生を歩んでいくかを気にしていて、その人をどうやって巣立たせるかまでは上司の責任の範囲だと考えてる。

人が辞めるなんて日常茶飯事のことだし、重要なポジションの人が辞めるってのは当たり前のこと。そこまで感情移入してたら保たないって言ったらドライかもしれないけど。でも、臼井くんが辞めるときは泣いたよね(笑)自分がferretにJOINした時の唯一の自分のメンバーだったし、リリース前は夜中まで働いた日も本当に多かったしね。そこからferretが成長する過程を一番近いところで共有してたってことは大きいよね。

―― そうでしたね、僕も家に帰ってむせび泣きました(笑)

 

上司が部下に見返りを求めすぎてる

―― 自分でドライって仰ってましたけど、そこに至るまでに過去に苦い思い出とかあったんですか?

飯髙:
組織は違うけど24歳なる前くらいからマネージャーになって採用にも関わったり、何人も退職者を見送ったりした経験は関係しているかもね。最初はかなり感情的で、退職したいって言われると「なんで今一緒に頑張ってるのに辞めるんだよ」みたいなこと思ってた(笑)

でも、それって自分ごとなんだよね。自分がメンバーにその環境を与えてるみたいな。そういう上司の感情が入ると、退職のときにこじれたりする。これは逆に自分自身がメンバーに与えてもらってるんだ、ということに気付いたときに分かったんだけど。

 

―― ギブアンドテイクのテイクを求めてるみたいな?

飯髙:
そうだね、俺がやってんだからやってよみたいな。退職したいって考えたということは何かしらその人が未来を考えていて、そこに少なからず組織にも不満がある。それを踏まえて発言したんだなって考えられるようになってからは受け入れられるようになったかな。ちょっと言い方は難しいけど、今は求めすぎない。与える行為の方が重要だと思うよ。だからギブアンドテイクじゃなくてギブアンドギブのスタンスなんだと思う。

 

―― 見返りを求めるからこそお互い辛くなるんですかね。そこに感情が入れば、尚更こじれるみたいな。

飯髙:
でも辞めたメンバーが活躍してるのを見るのは気持ちいいよ。素直に自分と働いていたメンバーがこんなフィールドでも戦えるんだなみたいなことが思えたり、もっと引き出してあげればよかったなって反省になったり。

 

部下が辞めると決断する前のサインに気付けるか

―― プラスで辞めてくのであればOKって仰ってましたけど、具体的には何を基準に判断しますか?

飯髙:
一つではないけどわかりやすいことで言うと、こういうことをやっていきたい、みたいなビジョンが明確になってるときかな。自分がどうあるべきかということを描いているのであれば、それは止めようがない。これが理想で良い辞め方だと思う。だから臼井君の時も、じっくり話し合ったでしょ?

もし、そうじゃなければ本音を聞くしかない。中には建前で話す人もいるから。大抵が辛かったりとか、人間関係、お金とか。だから本質的な問題を聞いてから判断かな。

 

―― 僕は決断する前に色々相談させてもらったんですけど、事前に相談も無く突然「辞めます」って決意してきてくる人もいるじゃないですか。

飯髙:
その場合って次の転職先が決まりましたとかでしょ。それって上司が信用されてないってことなんだよ。「勘弁してくれ」って思うけど、その環境を作ったのって上司だからね。それはメンバーとコミュニケーションとれてないってことだから、上司が悪いと思ってる。

だからこそ基本的にメンバーが思ったことを早く言ってもらうのが重要。そのために事前のコミュニケーションや人間関係を構築しておくことで、そういう辞めたいアラートにすぐ気付ける。それで気付いたのに気付かない素振りをするのが上司として一番やってはいけない行為だね。辞めるってすぐ分かるから(笑)

 

―― なんで辞めそうな人が分かるんですか?

飯髙:
すぐ分かるよ。分かりやすいので言えば、服装が変わるとか、急に火曜だけ早く帰るとか。特に営業とか急に空アポ入れたりするからね。わざとどうだった? って聞いてみたり(笑)

例えば、自分の好きな人の態度が変わったらわかるでしょ? それと同じだと思う。

 

―― でも、飯髙さんって別の事業部の人でも「あの人辞めそう」とか言っていて、センサーみたいなものありましたよね?(笑)

飯髙:
外だからこそ分かる場合もあるね。いつも辛そうな顔してた人が突然、明るくなると「あ、辞めるんだな」みたいな。多分、踏ん切りがついたか次が決まったんだと思う。

 

―― ある意味、そういう表情一つとってもサインなのかもしれないですね。

飯髙:
そうだね、だからこそ事前のコミュニケーションだったり人間関係を構築していくことが重要。絶対辞める前には予兆があるから。そこに気付けるかだよ。それが管理者としての責務でもある。

究極のことを言っちゃうと “辞めるって言わせたらもう終わり”。その言葉をだすのは簡単なことじゃない。当人からしたら辞めることを上司にどう伝えようか、タイミングをどうしようとか考えてるわけで。上司は、その言葉の重みを知ったほうがいい。

だから急にメンバーが辞めると言ってから慌てるんじゃなくて、辞めると決断する前にできることをすべきだと思う。

臼井 翼

WEB制作、大手から中小企業までのWEBコンサルティング、WEBマーケテイングメディア『ferret』立ち上げなどを経験した後、2016年9月から福島県にUターン。福島の観光WEBマガジン『福島TRIP』運営する傍ら、県内企業に向けたWEB制作やWEBマーケティング支援などを行っている。