世界のビジネスリーダーがこぞって実践するマインドフルネス

アップルのスティーブ・ジョブズが実践していたり、Googleやインテルといった大手企業が社をあげて取り組んでいることで、注目を集めるマインドフルネス。
同志社大学心理学部・武藤崇教授『自分の〈こころ〉との新しいつきあい方: マインドフルネスとは何か』によると、以下のように説明されています。

(前略)近年の認知/行動療法において,マインドフルネスの定義は「ある特定の方法で自分の体験に対して注意を向けること:意図的に,いまこの瞬間に,判断することなく」というものが一般的である。

マインドフルネスとは、「いま、ここにあること」に意識を集中し、雑念を取り払って心を整った状態に持っていく瞑想の一種。宗教的な意味合いは特になく、大げさな準備も不要。短時間で実践可能であることが、ビジネスパーソンに人気な理由のひとつとされています。

本記事では、マインドフルネスはどのように実践すればいいのか、そして私たちに何をもたらすのか。

マインドフルネスとは

取り返しのつかない過去の過ちに悩み、起こるかどうかもわからない未来を心配する。つい目の前の現実をないがしろにして、そんなことに思いを馳せてしまうのが人間というもの。

マインドフルネスとは、そんな四方に意識が及びがちな思考を「いま、この瞬間」に集中させることで、現実をあるがままに受け入れる手法。こうして雑念を遠ざけ、溜め込んでいたストレスを解放することで新しいアイデアや視点を見つけるだけでなく、心の平穏をもたらします。

よく作業中に別のタスクを依頼されたり、急な打ち合わせがはいったりと本来やるはずだったことに着手できず、集中力が乱される機会は非常に多いもの。そんな場合でも気持ちをリセットし、ストレスフルな状態から自分を解放することで「いま、この瞬間」に目を向けることができるようになります。

クリエイティビティを発揮しなければならない多くのビジネスパーソンにとって、マインドフルネスは恰好のセルフコントロールテクニックとなり得るのです。

どうやるのか?

マインドフルネスの実践方法には、必ずしも絶対のルールがあるわけではありません。いつ、どこでやるかにも諸説あるように、まだ明確な手法が定まっていないんですね。ここでは、早稲田大学の熊野宏昭教授によるマインドフルネス実践方法を参考に、ご紹介していきます。

まず、全体の所要時間は10分〜15分程度を想定ください。

1.背筋を伸ばし座って、目を閉じる。足は組んでも正座でもかまいません。長時間の座るのがつらいようであれば椅子に掛けてもOK。背筋を伸ばすことに意識を持っていき、他の身体に力が入っていない姿勢を見つけましょう。

2.身体が望むままに呼吸を行います。この時、どうでもいいことや悩みなど雑念が脳内をよぎりますが、無理に払いのけようとせず、呼吸に意識を集中するのがポイント。呼吸をすることで腹や胸が伸縮するので、その変化を追いかけてみましょう。例えば、息を吸って腹がふくらみはじめたら、そのふくらんでいく様を脳内で実況するといいかもしれません。息を吐く場合も同様です。

3.脳内に浮かぶ雑念は、「考えてはいけない!」と思ってたところで消えてはくれません。それどころか、次から次へと雑念が雑念を呼んでくるのを実感するはずです。しかし、それを気にする必要はないのです。たとえ怒りや悲しみの感情が浮かんできたとしても、それは仕方のないこと。落ち着いて呼吸の動きに意識を戻し、ただひたすらにその動きを追うことで、次第に呼吸に集中することができます。

4.雑念が薄れ呼吸だけに集中できるようになると、少しずつ「いま、この瞬間」の範囲が広がっていくことに気がつくでしょう。例えば、吸った息が身体をめぐっていく感覚、そのめぐった息が身体から出ていく感覚…。自分の身体に起こっている「いま、この瞬間」に集中できている証左といえるかもしれません。

そのまま呼吸を続けていくと、身体より周りの世界の動きを感じるようになるはず。風が強く吹いていることや、すこし温度が下がってきたこと、外を車が通り過ぎたことなど、「いま、この瞬間」に起こったことが、あるがままに感じられるのです。それに意味をつけようとせず、ただそこにあるものとして捉え、呼吸を続けます。

5.そっと目を開け、体をほぐしていきます。特に何か特別な行動をする必要もなく、これまでどおりの日常に戻ります。

いつやるのか?

マインドフルネスを瞑想と捉えると、空気のきれいな朝や、寝る前の気が静まった時間に行なうのがベストでは?と考えてしまいがち。しかし、「こうでなければならない」という宗教的な戒律は特になく、朝昼晩いつ行なってもかまいませんし、曜日や気温、ましてや季節も関係ありません。すなわち、自分が「いま、この瞬間に集中したい」と思ったときが実践すべきタイミングといえるでしょう。

朝から晩までいそがしく働くビジネスパーソンでも取り入れやすいのは、こういった「実践のしやすさ」も関係しているのかもしれませんね。例えば、タスクリストを眺めながら今すべきことを考えたいときや、ランチ後の眠くなってしまいがちな時間はいかがでしょう?「いつやるか」に悩む必要はありません。

どこでやるのか?

時間と同じく、どこでやるかもあまり重要ではありません。自分がくつろげる場所であれば家でもオフィスでもOKですし、必ずしも座っていなければならないわけでもありません。慣れれば立ったままでもマインドフルネスな状態になることは可能です。

とはいえ、瞑想中の姿を人に見られるのは抵抗がある、という人もいるでしょう。「いま、この瞬間」に集中したいのに、まわりの声やざわめきが気になってしょうがない、なんてことも。

マインドフルネス初心者は、まずは自宅のベッドやリビングなどからスタートしてみて、慣れてきたらオフィスの休憩室・トイレなどに実践の場を広げていってはどうでしょうか。

つまりは、自分が心穏やかでいられる場所であればどこでもいいのです。

やってはいけないことはあるのか?

マインドフルネスには絶対的なルールがないように、絶対的なNGもありません。

また、瞑想と言ってしまうとおおげさに聞こえてしまいますが、必ずしも座禅を組む必要はないですし、そもそも宗教的な要素もありません。いつでも、どこでも、自分がやりたいときにできるという意識で取り組むのがベストです。

渕上聖也

1982年生まれ、京都出身。
大学卒業後、出版社での営業職やカフェ店長などを経験、2010年ごろから執筆活動をスタート。

2013年にはライターとして独立し、IT企業を中心にさまざまなメディアと関わり合いながら、研鑽を積んできました。201610月より㈱リブセンスにジョインし、現職。