経営危機のUSJがV字回復したのは「選択と集中」をしただけだった

経営危機からV字回復した『USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)』。限られたリソースの中で「選択と集中」をすることで、2015年10月には月間175万人の動員に成功し、東京ディズニーランドの集客数を単月で超えるほどビジネスを劇的に好転させました。

そこに至るまでを綴った『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』からはUSJのみならず、多くの企業にとっても課題解決へと導くひとつの考えがありました。

 

重点施策は3つだけ。USJ流の「選択と集中」実践法

本書によればUSJが取り組んだ重点施策は、なんと3つだけ。リソースが不足しているからこそ戦うポイントを決めて集中投下したのです。

その采配を任されたのがCMOの森岡毅氏。この選択と集中するべき項目を選定する際に役立つのは「手のひら法」だと言います。「手のひら法」は大事なものを3つ選んで優先順位をつけ、それらに時間や労力を集中する方法です。毎日意識して継続するための習慣として手のひらを使います。

朝の仕事前には手のひらを見て3つ決めることを意識して、もし仕事中にいろいろ手を広げそうになったら、また手のひらをみて決めた3つを思い出そうというのです。そして帰宅時にも手のひらを見て達成できたことを確認し、できていなければ原因と対策を考え、明日やるべき3つを決めます。翌朝はその3つの確認からスタートします。

指3本に割り当てる際、まず最も重要な1つを一番長い中指にあてはめ、次に重要度の高い2つを人差し指と薬指にあてはめるのだそう。さらに優先順位は「年、半期、四半期、月、週、その日」と期間別で大きな目標から選んでいくのがポイント。

月曜日の段階で、1週間に達成すべき3つの仕事の優先順位を選んでおくと、日々の3つはより選びやすくなります。もっと言えば、月頭にはその月に達成すべき3つを、その前に四半期ごとの3つを、更にその前に半期ごとの3つ、もっと前に1年に達成すべき3つを考えておくのです。

引用:『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』

リソースが足りないからこそなにをして、なにをしないか、手のひら法」で整理するといいでしょう。

 

リソースは本質改善のために集中させる

本書では、ビジネスを成長させるうえでインパクトを与えるものを「ビジネス・ドライバー」と表現しています。

先ほどの「手のひら法」によって3つに絞ることとビジネス・ドライバーであることが重要であると綴っています。例えば、いろいろと手は打っているものの改善できずに疲弊している企業の多くは、ビジネス・ドライバーではないのかもしれません。

ビジネス・ドライバーでないということは、その問題解決にどれだけ注力しても、努力は報われません。

引用:『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』

「とにかく何かやらなければ」と焦る気持ちから手を広げた結果、リソースがを分散してしまい、改善につながらない、またはより悪化する可能性もあります。

限られたリソースの使い道を考え抜いて「選ぶことで足りるようにする」ために、あえてやらないことを決めるのも大切なのです。

そのために「手のひら法」でやらないことも意識して決めます。短い小指5本の指のうち2本には「70%未満の力で流す仕事」をあてはめて、最も短い親指にと「やったフリをする仕事」をあてはめるのです。

そうして余計に手を広げてしまわないように意識することが重要であるとのこと。

簡単に言ってしまえば、その日に達成すべきこと(あるいは達成できること)で本当に大切なものは3つ程度しかない、その1年で達成すべきことも3つ程度しかないということです。

引用:『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』

現に森岡氏のミッションは、経営危機のUSJの集客数を増やして売上金額を上げること。そのために「手のひら法」で選択したビジネス・ドライバーも3つだけでした。

 

「映画だけのテーマパーク」を変えて大成功

森岡氏がリソースを集中させたビジネス・ドライバーは「顧客層の拡大」「単価アップ」「CMの品質向上」の3つ。

ひとつ紹介すると「顧客層の拡大」のために行ったのがコンセプトの見直しです。これまで「映画だけのテーマパーク」として莫大な費用をかけてハリウッド映画のアトラクションを導入してきましたが、経営危機のUSJには新たにアトラクションを導入する資金はありませんでした。

そこでアトラクションの多様化を目指した「世界最高のエンタメを集めたセレクトショップ」はまさにビジネスを左右するビジネス・ドライバーでした。

これによってアニメやゲームなどの、人気があり低予算で導入できるアトラクションを強化。「ワンピース」や「モンスターハンター」などの導入がヒットして集客を増やしていったのです。

さらに寒い閑散期の集客増のために、国内外で人気のある「エヴァンゲリオン」や「きゃりーぱみゅぱみゅ」などを起用し、スノボに行くような若者や旧正月で海外旅行者にターゲットを絞ったイベントも大盛況になりました。

そのほか、こうしたブランドに頼らない独自のイベントも強化。特にヒットしたのが「ハロウィーン・ホラー・ナイト」です。ゾンビたちのメイクや演技も高レベルだったこともあり、ハロウィンイベントでは狙い通り大きな話題を生み、集客効果につながりました。実は、このイベントも社内にすでにあったゾンビ・コンテンツを応用したことにより低予算で実現しているのです。

こうしたヒットを積み重ね、莫大な費用をかけて「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」を導入し、この年には入場者数が過去最高を更新。

こうしてUSJは「顧客層の拡大」というビジネス・ドライバーの改善に成功。それに加え「単価アップ」「CMの品質向上」という残り2つのビジネス・ドライバーにも取り組み、結果として森岡氏が入社した2010年には年間動員数730万人だったのに対し、2015年には1390万人という奇跡的なV字復活を果たしたのです。

板村成道

1983年生まれ、山口県出身。
東京での不動産企業やIT企業勤務を経て2011年に移住。大分と熊本で暮らし、2014年から福岡在住。『福岡移住計画』ディレクター。
ソーシャルウェブマガジン『greenz.jp』ライター。